――一週間の契約

 

4日目 あそび 07――ホワイト

…気付いた時、私はベッドの上に寝ていた。
いつの間に眠ったんだろう…?
昨日はブラックの話を聞いて…それから…
…それから?
私はベッドから降りて廊下を見た。

「…ブラック…?」
「ん…?」
薄目を開ける。
「…起きたのか?」
「ええ…昨日…」
「…ぁぁ、しっかり寝てたからな…」
やっぱり…寝ちゃってたんだわ、私…

「…ごめんなさい」
「何故謝る」
「だって、話してと言ったのは私なのに…」
「別に構わねぇよ、聞いてるほうにしてみれば相当退屈な話しだっただろうしな」

そういう意味で言ったのではないのだけれど…
ええと…何か言わなくちゃ…

「…何か食べた?」
「は…?」
「御飯…もうお昼でしょう?」
あら…溜め息を吐いてる。
「…何も食ってねぇよ」
「そう…じゃあ何か作るわね」

* *

「…今日もそうやって過ごしてるのか?」
「…そのつもりだけれど?」
「もう4日目だぞ…俺はお前を守るために呼び出されたんじゃねぇのか?」
「ええ…そうよ」
「しかし…」
何も来ない…
ええ、確かに…今は何も来ていないわ。
「…まぁ良い…暇つぶしはいくらでも出来るさ」
…また退屈みたい…やっぱり…何かやったほうが良いのよね?

「…ブラック」
「何だ?」
「トランプ…やらない?」
「…はぁ?」

彼はまた間の抜けた声で、聞き返してきた。



4日目 あそび 08――ブラック

…トランプ…って言うと、あのトランプだよな?
何でこのつながりでトランプに行き着くコイツの思考回路がよくわからない。
もう慣れたような気もするが…

「…何をやりたい?」
「何でも良い…一通りはやったことあるからな」
「じゃあ…神経衰弱」
また俺の苦手なものを…
「…ぁぁ、わかった」
「じゃあ…やりましょうか」
ホワイトは戸棚からトランプを出してきた。
…かなり埃を被っている。しばらく使ってなかった様子で。

「…ぇーと…」
トランプをばら撒き始める。
「…ちょっと待て!それは明らかに違うだろ…?」
「ぇ…」
彼女はトランプを裏向きではなく表むきにしてばら撒いていた。
「普通はこっち向きに並べるもんだろーが…」
「ぁ…そうだったわね…」
「そうだったわねって…お前、やったことねぇのか?」
「いいえ…昔は結構よくやっていたのだけれども」

とりあえず、俺が適当に切ってばら撒いてみた。


「じゃあ…ブラックからどうぞ」
「ぁぁ…じゃあ…此処から」
クローバーの5
「次は…此処か?」
ダイヤの6
「…チッ」
「じゃあ…私の番ね」
ふとめくると、ハートの6が出た。
俺が前にめくった位置に手が動き、見事ダイヤの6を取ってみせる。
彼女の口に微笑が零れるのが見えた。

「…じゃあ…次はこっち」
全く反対方向へ手が動き、スペードの12を出した。
そして彼女の手は、導かれるように次の場所へと動き…その下にはクローバーの12があったのであった。

「…嘘だろ」
言ってる間に彼女はどんどん札をめくる。
途中1回間違えて俺のほうへ廻ってきたが、それでも結果は一緒。俺は一組もカードを手にすることが出来なかった。

「…強いじゃねぇか」
「そう…?」
結果は完全にホワイトの圧勝だった。
「ぁぁ…結構やったことあるんじゃねぇのか?」
「ええ…小さい頃、1人で」
…1人?

「じゃあ…次、何かやるか?」
「神経衰弱以外…知らないの、私」
ふと微妙にだが少女の顔に影が射す。

「…じゃあ…また神経衰弱にするか」
「ええ…」
少女の顔に微笑が零れる。

この少女は、人と遊んだ事が無いのだろうか?
やっぱり、孤独で生きてきたのだろうか?
こんな小屋で、たった一人で…

その神経衰弱は、夜まで続いていた。