2人に、1人。
 2人に、1人。
 2人に、1人。

 ふたりに、ひとり。



「…音華」
「何よ」
時間は丁度お昼時。琴乃は目の前で一緒に昼食中の皆瀬音華に問いかけた。


「…2人に1人、ってどう思う?」


「…まぁた唐突な質問ね。って言うか、何よ、2人に1人って」
音華は手にした温かいお茶の缶を口から離すと、冷静に言った。
「んー…上手く説明できないんだけどさ」
琴乃は箸を口に運びながら話す。

 話を要約すると、つまりこうなる。

 琴乃には数多くの知り合いがいるのだが。
 その友人達は皆恋人がいて。
 またその恋人とも知り合いであったりもして。

 気付いたら2人いる場面に1人、という場合が多いのだという。

「いやあのね、2人とも私とも話してくれるし、私は楽しいんだよ?楽しいし嬉しいし私も途中でさり気なく抜けるようにはしてるんだけど、それってどーなのかなぁ、って」
「2人に1人、…ねぇ」
音華はず、とお茶を飲むとふぅ、と息を吐く。

「…良いんじゃないの?別に」
「別に、…って」
「其の人たちはあなたを拒否しないんでしょ」
こくり、琴乃は一度頷く。

「…そりゃあ2人きりで話すのが一番楽しいとは思うわよ?けど、それだけで他の誰とも喋らない人って、琴乃から見てどう思う?」
「…んー……微妙」
「でしょう?2人の仲を邪魔してるわけじゃないし、途中で抜けてるわけだし。別に、それ以上気遣う必要も無いと思うわよ」
「そーゆーもん?」
「そーゆーモンよ」
琴乃は自身の紅茶を手にすると、軽く喉に流し込んで、小さく笑った。

「…ありがとね、音華」
「別に良いわよ。…それにしても」
「?…何?」
音華はじっと琴乃を見つめる。琴乃は軽く小首をかしげた。


「琴乃って、恋人同士の友達は多いのに自分じゃ恋人作らないのね」


 琴乃の動きが一瞬止まる。
 が、琴乃はすぐにへら、と笑った。

「良いんだよ、私には今は必要ないもん」
「そう?あなたにこそ必要だと思うんだけど」
「今は良いの。今は音華で充分」
にこりと笑って言えば、音華ははいはいありがとね、と冷めたように返した。

「あーでも、音華は恋人って言うより親友?相棒?…いや、お姉ちゃんかな?」
「なーに言ってるの、誕生日はそっちの方が先のくせに」
「あ、反応してくれた。じゃあ音華私のことお姉ちゃんって呼んでねー」
「嫌よ、絶対」
にこにこと調子に乗って会話を進める琴乃に、音華は突っ込みを入れながらも小さく笑う。


「ねぇ、音華」
「何よ」
「音華に彼氏が出来たら紹介してね」
「は?何であなたに紹介しなくちゃいけないわけ?」
「お姉ちゃんに彼氏見せたいとか思うのが妹じゃないのー?」
「絶対嫌よ、…だって」
「だって?」

 笑顔は、琴乃のほうが可愛いから。
 音華はそう言い掛けて

「なんでもないわ。ほら、早く食べきらないと昼休み終わっちゃうわよ」
「え、…うわっ、もうこんな時間なのーっ!?」
いっけない早く食べなきゃ、そんなことを言いながら琴乃は再びお弁当に手をつけた。


 2人に1人。
 2人に1人。
 2人に2人になる日が来るまで。

 あと少し、お邪魔します。






実は大分前に出来上がってた作品。
全体的にテンション微妙なのと、色々と設定がアイタタタだったので載せなかったとか。
琴乃のお友達にはカップルさんが多いのです、って言う話。
後音華とは色々あったけど仲良いんですって言うのが書きたかった気がする(ぇー
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