女の子っていうのは、色々大変なものなんです。



「…えーっと、お姉ちゃん…大森ハルさん、いますか?」

 そこは3年A組の教室。
 琴乃は入り口にいる人影に声をかけ、目的の人物を呼び出してもらうことにした。

 女子の中では割と背の高い――誰もが高校生などと思わないであろう女性。
 制服を着てはいるものの、その姿は一際目立つ。
 大森ハル――男女問わず誰もが目を奪われる存在であり、少女であった。

「…あら、琴乃ちゃんじゃない。どうしたの?クラスまで来て」
ハルは琴乃に優しく微笑みかける。
「へへ、…えーとー…」
「?どうしたの、琴乃ちゃんが言葉を濁すなんて珍し――」
琴乃は意を決したように、ハルの手をぐ、と両手で握った。
 そしてその手を、自分の胸の前で組む。

「お姉ちゃんにお願いがあるのっ!」
「…え?」
ハルは一瞬目を丸くし、そっと小首をかしげた。




 放課後。
 此処は学校にほど近いショッピングモール。なかなか大型のモールであり、幅広い年齢層からの人気が高い場所であった。
 琴乃とハルはレディースフロアを歩く。

「ふふっ…買い物に付き合って欲しいなんて、あんなに改まって言うことじゃないのに」
「だってー…何だかんだでお姉ちゃんと学校の外で遊ぶのなんて初めてじゃないですか」
「そういえば…そうねぇ」
ハルは琴乃の横でふふっと微笑を零す。
 琴乃はその姿に思わずへへ、と小さく釣られるように笑った。


「で、さっきから気になってたんだけど――琴乃ちゃんの行きたいお店って…」
「え、…えーっとぉ、…その」
琴乃は言葉を濁して軽く頬を掻く。ハルは不思議そうに小首をかしげた。
 琴乃は小さいながらも極普通の女子高生である。
 勿論容姿にだって気を遣うだろうし、別に行きたい店のブランド名も濁す事無いのに――
 おしゃべり好きな琴乃をよく知るハルにとって、琴乃の態度は妙に不自然だった。

 すると、琴乃はあるフロアで足を止める。

「えーと、…此処なんです」
「え?…此処って…」

 たどり着いた場所、其処はランジェリーを主として取り扱っているショップであった。
 ブランドと言えど割と若年層に人気のあるブランドとして名を馳せたショップであり、価格設定もさほど高くない値段が設定されている――

「…お姉ちゃん」
「何かしら?」
琴乃はまた、ハルの両手をぐ、と掴んで胸の前で組む。
「…あのっ、…恥ずかしながら、私、こういうところでちゃんと下着買った事無くて…!」
「…え?」
「いやっ、ブラとかつけてなかった訳じゃなくてっ、…こう、何ていうか、可愛い下着って買った事無くて…」
「…」
「だから、…その、一緒に選んでいただけたらなー…って」
最後のほうは、ぼそぼそと声が小さくなっていく。琴乃は頬を赤くして居心地が悪そうに視線を泳がせていた。

 ハルは最初こそ呆気にとられていたが、ふふ、と小さく笑い始めた。

「…だから、そんなに改まって言う事じゃないわ」
「えー…だってぇ、恥ずかしいじゃないですかー…16にもなってまともな下着つけたこと無いのってー」
「ふふっ…琴乃ちゃん、私はあなたのお姉ちゃんなのよ?これぐらい、してあげて当然だわ」
ハルは琴乃の手を引くと、行きましょ、と促す。
 琴乃はあはは、と笑うと

「…実はサイズもちゃんと測ったこと無いんです」
「あらあら…じゃあまずはそこからね」


 姉妹のような二人の姿は、店の中へと消えていった。






 おまけ。

「あ、ハルじゃないの」
「あら、鴇音と…螢じゃない。また珍しい組み合わせね?」
「そうか?」
「ところで試着室の前で…誰かと来てるとか?」
「ふふっ…見てのお楽しみ、よ」
『お姉ちゃーん、ちょっとこれ透け過ぎないー?』
「…琴乃が入ってるのか」
「えー、どういうの選んだの?ちょっと見たいなぁ」
『煤cその声はお父様と鴇音先輩ですか!?え、いや、ちょ、これはちょっとー…!』

「…って、勝手にカーテンから覗かないでください先輩方っ」
「あら…ふふっ、選んだとおりだわ」
「似合ってるわよ、琴乃ちゃん」
「何ていうか…凄いな」
「先輩方……確かにこれ可愛いけど…とにかくっ、一旦外すので閉めますよーっ」

「ふふっ、閉められちゃったわ」
「相変わらず可愛いわねぇ…ところでハル、琴乃ちゃんが着替えてる間、私たちで螢の下着選ぶってのはどう?」
「な…!俺はただついてきただけで、…その…」
「えー…螢、下着って言うのは自分だけが見るものでもないのよ?」
「いざって言うとき、見られても大丈夫な下着が無くちゃ困るでしょう?」
「いざって言うとき…って…っ」
「でも鴇音、あなたも人のこと言えないのよ?まぁ…鴇音なら心配無いと思うけど」
「当然ぬかりはありませんよ…って何言わせるのハルっ!」


 少女同士、話は尽きないのであった。
 強制終了。






あとがき
いつも有難う御座いますキャンペーン…とはいえこんなん書いちゃってよかったのかな…(特にオマケ/…)あの、本編ともかくオマケの方本当にスミマセン(土下座)
ハルちゃん鴇音ちゃん螢ちゃんお借りしましたー…ああでもこの4人で恋愛とか色々語らせたらそれはそれで楽しそうだとか思う自分がいるんだごめんなさい(土下座/…)
密ちゃん加わったら最強だよねこれ(笑)
つかスミマセン…これ実はオマケの方も小説にしようと思ってたんだ…収拾つかなくなりそうでオマケにしちゃったけど(既に収拾ついてない)
とりあえず皆さんいつも有難う御座います…と…これからもよろしくお願い致しますv(はーと)
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