何に代えても、守りたいものがあった。

 其れはとても淡いもので、抱きしめた人の体温を、初めて俺に教えてくれた子――


 何処に、消えてしまったのかは、わからないまま。


 俺は待つことは出来ない。

 彼女の涙だって本当は、もう見たくない筈だった。


 望みでかけた電話も、結局繋がらなかった。



 ――ユイロ



 それは初めて、俺に「恋」を教えてくれた、小さな小さな女の子の名前。

 雪のように儚くて、雪のように姿を、何処かへと溶かしてしまった女の子。


 伸ばした手は届かなくても。

 今は何処かで、きっと幸せに暮らしているんだろう。

 それで良い、と思う。


 俺の時間は動いていて、あれから別の恋もしたけど。

 それでも、今になって――唐突に思い出すことがある。


 彼女の誕生日を祝ってやれなかったこと。


 唐突に後悔することもある。


 寂しかった思いをさせてしまったことも。

 電話越しに聞いたか細い啜り泣きの声も。

 既にそれは、遠い記憶のことでしかないけれども。


 同じ過ちは、二度と繰り返さないって、――あの時誓ったはずだったのに。


 ――ユイロ。


 ――それは、全ての始まりの色。




今まで滅多に語られることの無かった、夢芽の初めての彼女のお話。
前の前の彼女さん。と言うか、夢芽の初カノ。学校の人じゃないですg(ry
でも初恋は彼女じゃなかったりします()
あ、でも「恋」はきっと彼女で初めてですネ。その前のはきっと「憧れ」。「その前」は設定上のものですが。
雪の色と書いてユイロちゃん。オリジなりきりで初めて出会った、思い出深い女の子です。
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