それは、ある夏の日のお話。
 琴乃は買い物をするために街を歩いていた。

「あっれぇ、華虎じゃん」
街中を歩いていると、見知った人影を発見した。
 後ろからあっさり声をかける。

「わぁっ!?琴乃チャンかー」
「何そんなに驚いてんのー、久し振りだねぇ華虎」
琴乃は華虎を見上げ、へへと笑い目を細めた。
 180を越える彼の姿は、見上げるだけでも眩しい。まるで後光が差しているかのように見えた。

「こんなところで何やってんの?」
「いや、ちょっと」
「あー、デートなんだぁ」
琴乃は華虎を見上げるとにやにやと笑う。
 華虎は思わず苦笑した。

「琴乃チャンには何でもバレるのな」
「当然でしょ、親友だもん」
「おう、流石。…と、ちょっとゴメン」
と、華虎は携帯電話を取り出した。ランプが光って震えている。
 華虎はそれをぱか、と開くと、手早くメールを打って返したようだった。

「…琴乃チャン、少し時間空いてない?」
「え?」
「1時間ほど、俺とデートしない?」



 此処は、駅前の喫茶店。
 窓際の席で、琴乃はパフェを注文していた。

「えへへ、悪いねー華虎」
「構いませんよ、これぐらい。琴乃チャンに奢ったって言えば、ハルも文句言わないだろうし」
「有難うー、わぁ来た来た!」
と、ウエイターが大きなパフェを運んできた。琴乃は感激して携帯を構え、写真を撮る。

 何故二人がここにいるのかといえば、
 華虎と待ち合わせをしていたハルが、急な用事で一時間ほど遅れるという連絡が入ったのであった。
 そこで、待ち合わせである駅前広場がよく見えるこの喫茶店で、少し休憩しようという事になったのであった。

「へへ、いっただっきまーす」
「はい、どーぞ」
華虎はアイスコーヒーのストローを銜えながら笑う。琴乃は嬉々としてパフェを食べ始めた。

「お姉ちゃんとはうまくいってるみたいだね」
「ハイ、お陰様で」
「よかった、華虎やたら幸せそうだもん」
琴乃はパフェを口に運びながらへへ、と笑う。
「琴乃チャンも、何かそれ食ってる様子が幸せそう」
「言ったなぁ、女の子はね、甘いもん食べてる時が一番幸せなのっ」
いつもと変わらぬ様子で笑い合う。

 琴乃は、不意に一口分を手にとって相手に差し出した。

「食べる?」
「食べる」
ぱくり、と華虎はスプーンから一口分のアイスを口にする。
 琴乃は、思わず吹き出した。

「華虎さぁ、そこは拒否んなきゃ駄目じゃん!」
「え、やっべぇそれは気付かなかった!」
「お姉ちゃんだって普通の女の子なんだからねー?変な誤解しないと思うけど、見られてたらどうするのよーもう」
軽く笑いながら再びパフェを一口二口と口にする。

「琴乃チャンは、最近どうなの?」
「どうってー?」
「いや、ホラ、好きな男がいるとかー、そういう…」
琴乃は一瞬手を止める。
 徐に視線を落とし、何処か遠い目をする。

「え」
「…いると思う?」
「いや、ホラ、もうあれから大分経つし、いるのかなーって思って」
そのまま、暫く黙り込んでみた。

「………、ご、ゴメンっ!」
「…」
「そ、その、まさかそういう反応が返ってくると思わなくて、…ええと」
「………ぷっ…」
「………、え?」

 琴乃は、思い切りあはははは、と笑い出した。
 華虎は、思わずその場でぽかんとする。

「あはは、はははは…やっばぁ……華虎、面白すぎ…!」
「…は?え?ちょっ…」
「いや、あの、ごめん!ちょっと遊んだ…!」
「え、…ちょ、…琴乃ちゃーん…」
勘弁してくれよ、と華虎はうな垂れた。琴乃はあはははは、とまだ笑っている。

「もー…華虎さぁ、もうちょっとその辺上手く乗り越えられるようにした方がいいよ?モテるんでしょー?」
「琴乃ちゃんが言うほどモテないよ、もう…変な汗出てきた」
華虎は安心したように笑うと、外に視線をやった。

「…あ」
「あ、お姉ちゃん来たみたいだね。メール打ってるよ」
視線の先には、ハルの姿があった。琴乃は華虎を見返す。
「行っておいでよ、私はこれ適当に食べきるからさ」
「ああ、ゴメンな。…じゃあ、付き合ってくれてありがと」
「うん、いってらっしゃい。楽しんできてねー」
琴乃は、華虎が会計を済ませるのを確認するとその後姿を見送った。
 程なく後にハルと合流しているのが窓の外に見える。

「…まったく、見せ付けてくれちゃうよねぇ」
思わず、くすと笑みが零れる。

「私も早くいい人見つけないとなぁ」
と、甘いパフェを口に含みながら――琴乃は、再び美味しい、と小さく笑って呟いた。








END




あとがき
いつもお世話になってますシリーズ…ってちょ。
え、あ、スミマセンこんな痛いモン書いて!
しかもこれハルちゃんも出演させようと思って華虎君出したのに結果的に華虎君だけの小説に…!orz
一度アレをネタに華虎君をからかう琴乃を書いてみたかったのです(…)
琴乃は何だかんだで完全に割り切って次の恋愛を模索中な感じなので、これでからかったけど実はーなんて物語的には面白い展開は無かったりしますが(滅)
…結果的にただの日常ネタになってますけど気にしない!(…)
斎焔ちゃん書かせてくださって有難うでしたv
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