『…久々に逢いたいんで、良かったら返事ください』
そんな内容が示された…小さなメモ。
 学校のほぼ中心に設置してある掲示板に、さりげなくセロハンテープで…ぺたり、とそんなメモを貼り付けた。

「…何で、忘れられないんだろ?」

 初めて出会って、まだ2回しか経っていない彼女。
 第一印象は…美人。
 結構話も弾んでいて……何となく、もう一度逢いたいなと思った。

 その後、逢ったのは1度だけ。
 気付いたら、2週間ぐらい時が過ぎていた。

「オイ、夢芽。美弥は?」
「学校……多分、彼女さんとこ」

 バレンタインの日の会話。
 晴架にそう、さらりと返して。

「へぇ、アイツもやるねぇ………ところで夢芽、お前は?」
「お前は…って?」
「彼女。いただろうが、後輩の可愛い女の子が」
「ああ……」

 別れた、と小さく告げて。
 晴架は一瞬驚いた顔をするも、悪ィと返す。
 が、不思議と嫌な気分はしていなかった。
 と言うよりは……もう“彼女”そのものが過去の人になってしまっていて…もう、振り切れている感があったからかもしれないが。

「もう前だよ……大分」
「そうか…で、それっきりソレらしいことは?」
「無いよ……多分」
「多分って何だよ…多分って」

 多分、と言う答えは嘘ではなかった。
 実際………気になって気になって、忘れることが出来ない人物は、ちゃんと夢芽の中に確かに存在したから。

「わからない…気になる人はいるけど……好きなのか、どうか」
「…わからない……か…夢芽らしいな、何か」
「そう…?」
「ああ。お前、前も似たようなこと言ってたからな……」

 そうだっけ…と小さく返してみると。
 晴架は、よし、と一言言って

「とにかく、そういうのは…逢ってみなきゃわかんねぇだろ?逢え」
「逢え…って言われてもさ、最近見てないし…来てないかもしれないし」
「掲示板あるだろーが。あそこは何のためにあるんだ、ええ?」

 掲示板…
 その言葉を聞くと、ああ…と小さく頷いて

「忘れてた…」
「お前、ソレぐらい覚えとけよ…来てないかもしれないなら、駄目元で一回書いとけ。それで返事が来なければ…諦めぐらいはつくだろうからな」

 言って、夢芽の肩をポンと叩く。
 見上げれば、ニィと笑っている顔の晴架がいた。

「………んー………考えとく」
「書けよ?」
「ぃゃ……俺、手紙書くの苦手だし」
「普通に書いとけば良いんだよ、普通に」
「その普通…がわからないんだけど……」


 その日、珍しく殆ど寝ずに……考えた手紙が、ソレだった。



「…オイ、夢芽」
「ん……?何、兄貴…」
「何か……掲示板に、お前宛のメモ貼ってあったぞ。中身は見て無ェけど…って、夢芽?」

 言い終わるより先に、夢芽は走り出していた。


「…」


 そこには、確かに――
 また、めぐり合える証が――貼ってあった。



 今度、夢芽は………確かめに行く。
 自分の気持ちが……本物か、どうか。





………物凄く懐かしい(ぇ
前の彼女さんに、夢芽が片想いしていた頃を描いた作品です。
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