「そうだなー…えっと、これなんかが良いかなー…」
雑貨屋にて、1人の少女は色んなものを物色…ではなく、探し回っていた。
「あ、これも可愛いーvでもこっちの方が良いかなー…」





思い出





「えっと…あ!!」
そして、1つのものに行き着く。
「これが良い!絶対!!」

 少女は1つの包みをレジまで持っていった。




 少女の名はレイシャ・ルークス。
 まだ15歳ながら、魔法や剣術に長けている。
 最も得意とするのは弓矢と魔法の組み合わせ技だが。



「よし、ちょっと高かったけど…まあ買いたいもの少し抑えれば平気よね☆さてと、帰ろうっと♪」


 明日はバレンタイン。
 彼女はそのために1つのチョコを買っていたのだった。


「ただいまー!」
「ああ、レイシャ。お帰り」
父親が迎える。
 ここは街の宿屋だった。

「ちょうどお客さんが来たところでね。案内していってくれないか」
「あ、はーい!」
そして、案内ついでに部屋まで行こうとすると…

「おっと、部屋まで行くのなら303号室のお客さんたちを呼んできてくれないか?夕食の時間がもうすぐだからな」
「はーいっわかった!グルーたちのところね♪」

 慣れた応対で客を部屋まで入れる。
 そして、自分の部屋のいくつか向こうの部屋へ向かう――。


コンコン


「はいっと…」
中から1人の青年が出てくる。
「おっとレイシャ。どうしたんだい?」
「アルファもいたの。ちょうど良いわね」
「アルファも…って何だ。俺はついでみたいじゃないか…まあいいけど。で?」
目の前に出てきたのは陽気そうな青年。
 彼女は彼の後ろを少し覗きつつ――…
「もう夕食の時間だって」
「わかった、行くよ。…おい、グルー!行こう」

 奥の人物はゆっくりと立ち上がったようで。
「ああ…わかった」
少し眠そうな様子でやってきたのだった。

「グルー、眠そうー…もしかして寝てた?」
「別に…何でもねー…」
「なら良いんだけど」
どこからどう見たって眠そうである。

 …すると、アルファは
「あ、レイシャ。…悪いけど、後で俺たちの部屋来てくれないか?」
「え?別にかまわないけど。どうしたの?」
「その用事は後で伝えるって。ホラ、早く行こうぜー!俺腹へって死にそう…」

 グルーと相部屋なのはアルファ・レイフォード。
 グルーともレイシャとも同い年の15歳。
 妙に明るく、口数の少ないグルーとは対照的だ。

「…グルー、話って何?後でしても変わらないでしょ?」
「後でするって言っただろ」
グルーの横顔は、いつになく静かで…レイファの心に、ふと不安がよぎったのだった。


 彼ら…グルーとアルファがこの街にやってきたのは一月ほど前の事だ。
 彼ははこの街でモンスター・バスターという仕事に登録し、しばらくここに滞在することになったのである。
 レイシャも前々からモンスター・バスターに登録していた。
 そして向こうが機械的にパーティを分けた組み合わせで、グルーとアルファにレイシャが加わる事となったのだ。
 同じ年という事もあり、レイシャはすぐに2人に溶け込みレイシャは2人の旅についていく事も決心していた。
 そして、そのことは…アルファもグルーも知っているはず…だった。


コンコン

「…入っていい?」
「ああ」
「じゃ、失礼するわねー」

 レイシャは部屋の中に入った。
 部屋の中はランプたった一つでしか照らされておらず静かで…微妙な明るさだった。

「どうしたのー?話って」
「まあ、そこら辺に座ってよ」
アルファが促す。グルーは相変わらずベッドの上に座っていた。

「…そのー、俺たちさ、明日。この街出ようと思ってんだけど」
「…え?そ…そう、なんだ。ね、あたしも――…」
「お前は来るな」

「…え?」

 低く響いた声は…グルーのものだった。

「グルー!そんな唐突に…」
「どうせ言うんだ。引き伸ばしたってしょうがねーだろ」

 レイシャは…言われた事の意味がよくわからず唖然としていた。
 しかし、はっと我に返る。

「じょっ…冗談じゃないわよっ!あたしもついてくって前にも――」
「こっちはつれてくなんて一言も言ってない」
「でも…!!」
「うるさい」
グルーは冷たく言い放つ。

「足手まといだ」


「…!!」

 レイシャはこらえきれなくなってその場を飛び出した。




「…グルー、あそこまでいう事は無いんじゃないか?」
「あれくらい言わないと、意地でもついてくるだろう」
「そりゃあそうかもしれないけど…」

「あいつには…殺す事を本職にすることなんてできやしねぇよ。それが例え動物でも…な」





「…グルーの…馬鹿っ…」

 レイシャは自室で泣いていた。
 次から次へと溢れてくる…涙。

「…ただ…ただ、一緒に…っ!!一緒に行きたいだけ…なのに…っ!!」


 すると、レイシャの目に1つのチョコが飛び込んでくる。


「…燃やそっかな…コレ…」

 手の中のチョコを見つめる。






(…と思って外に持ってきたは良いんだけど…)

「いざとなっちゃあ燃やせないものねぇ…」


 薪はあるもので足りる。
 マッチは手の中。
 いつでも燃やす準備は整っている。


「…やっぱ未練ありまくりー…」


ガサッ


「えっ!?」


 思わず物音のする方向を振り返る。

ガサガサガサ…ザッ

「きゃあっ!?」

 出てきたのは…見たことも無い猛獣。

「えっと…確かここら辺に短剣が…あった!」
そして振り上げようとした…その時。

キィンッ

「あっ!?」
短剣はレイシャの手を離れ、離れたところへ飛んでいってしまった。

「こうなったら魔法を…」
しかし猛獣はレイシャのほうへ手を振り上げては振り下ろす。
 今はかわすので精一杯だった。

「…このままじゃ…っ!!よし、サーレム・エンジェ…」

 一瞬立ち止まって呪文を唱える。

(お願い…間に合って…!!)

「…!!」

(ダメ、間に合わ…!!)


ガキンッ


「…え…?」
「大丈夫かレイシャ!?馬鹿、何突っ立ってんだよ!」

 目の前にいたのは…短剣を持ったグルーがいた。

「ホラ、時間稼いでるから魔法やれ!」
「あっ…ええ!えっと…サーレム・エンジェル…」
落ち着いてレイシャは呪文を詠唱した。

「…ハァッ!!」
手から炎の輪が出てくる。
 その炎は見事に猛獣に命中した。

「…やった…!!」
どうやら猛獣は息絶えたようだった――。




「…で、お前はこんな所で何やってたんだ」
「え…」
「こんな夜中に、充分な装備もせずに出たらどうなるか。わかるだろ」

 グルーの言葉が突き刺さるように聞こえる。

「あたし…えっと…それよりっ、グルーは何でこんなところにいるのよっ」
「俺…か?」

 グルーはすこし目を大きめに開く。

「っと…お前が…来るのが見えたから、だ」
「え…?」


「さすがに言いすぎだってアルファに叱られた」
「叱られた…って」
「謝って来い…って。さっきのは…言い過ぎた。悪かったな」


「…あ、あたしの方も…ごめんなさい。あまりちゃんと話聞かないで出てきちゃって…」
すると、思わず目から涙が溢れてきて…へなへなと座り込んでしまった。

「…!?」
「あ、えっと…ごめんっ…やっぱあたし…足手まといだってさっきのでわかっちゃって…涙止まらなくって…」
「レイシャ…」

 グルーは少し困った顔をするとレイシャの横に座る。
 そして、レイシャの顔は見ずに

「…お前を一度だって足手まといだって感じた事なんかねえよ」
「…え?」
「お前は…足手まといなんかじゃねぇ。少なくとも俺にとっては…な」

 最後、少しだけこちらを向いた――。

「けど…お前を、この近くの森にしか行ったことの無いお前を連れて行くわけにはいかない」
「…ん…悔しいけどわかる」
レイシャはこの街から一歩も出たことが無い。
 よって、この街に出る猛獣以上のものとは闘ったことも無いのである。

「…で、お前は何でここに来たんだ?」
「あ…えっと…」

 チョコレートは少し離れた場所に落ちていた。

「これ…」
「?何だ…コレは」
「…燃やそうと思って…でも…グルーにあげるっ」
「…?」

 レイシャはグルーにチョコを差し出し
「はい、コレ…1日早いバレンタイン♪」
「バレンタイン…そうか…そういえば…」
そこまで言うと、一旦止まる。

「…俺に…?」
「そう。…何だかあんな別れ方しちゃって渡しづらいしだからといって自分で食べるのもちょっと…って感じだし」

 レイシャは笑顔でこう言った。

「だから、受け取って」
「ああ…。サンキュ」

 するとレイシャはいつものノリで。

「でもさぁ、持ち帰ったらアルファに悪いでしょ?一緒に食べよっ」
「…ああ、別に構わない」
「やった☆いただきますー」
包みを開けて、丸いチョコを1つ取り出す。
「グルーも食べなよ。ほら」
グルーに一個差し出す。
「ああ」

 するとグルーはそのまま口をあけてレイシャの手から食べた。

(…っ!?何考えてるのよこの男は――っ!!)
かすかに触れた唇の感触に多少顔を赤くしながらもレイシャは平静を保とうとした。

「ん。確かにうまいな…ん?食わないのか?」
「ううんっ、食べるっ。おいしいっv」
「相変わらずというか…甘いもの好き、か?」
「当然っ。女の子は甘いもの食べてると幸せなのっ」
すると、グルーは滅多に見せない微笑を見せた。

「…ね、グルー」
「あのさ…いつか…また私と、パーティ組んでよね」

 レイシャは、自分の気持ちを抑えてこう言う。

「あたし、次会うときまでに絶対もっと強くなってるから!で、グルーやアルファみたいに旅に出るの。だから…だから、またいつか会った時にあたしと絶対パーティ組んでね!」
「…わかった」
「約束だよ!…ね?」
レイシャは必死の笑顔でそう言う。

「…無理に、笑うな」
「え?」
「無理に笑うんじゃない…無理に笑ってても可愛くもなんとも無い」
「なっ…」
レイシャは一気に顔が赤くなる。

(なっ…やな奴っ!せっかく笑顔で送り出してあげようと思ったのに〜っ!!)

「何ですってっ!あたしはどうせ可愛くないですよーっだ!」
「わかってるならいい」
「ちょっと、何でそこで否定しないのよーっ!」

 …そして、グルーは言った。

「そのままの、お前でいろよ」
「え?」
「後でまた3人で会った時も…そのままのお前でいる。これが俺からの約束…だ」

「…わかったわよっ!私はガキのままでいますっ!」
「…そうだな、そのままでいろ。じゃ、そろそろ行くか…」
反論しようかと思ったが、止めておいた。

「…明日、何時に発つの?」
「起き次第」
「そう。…じゃ、ついていく。アルファにお別れ言わなくちゃ」
「…そうか…」

(グルー…あたしの、最初の恋だったんだろうな。こいつは…)

 グルーは足元のチョコレートの包みを片付けている。

(さっきみたいなこと平気でやってのけるんだから…これから先も恋人作るのは難しそうね。…それじゃ…)

 レイファはグルーの首筋に軽くキスした…

(コレ位、許してよね…)

「…!?」
「さてとっ、帰りましょっ」










(また、絶対会うんだから…だから、それまでに…絶対、強くなってなきゃ…!!)









あとがき

番外編なので下に(ぇ
コレは全然加筆修正してませんねー(^^;
とりあえず彼等の15歳の頃のお話…ということでvv
第4話にちょろっと出てきたレイシャが出てきたりしますw

ではでは、読んでくださりありがとうございましたvv