暁夢芽。
2年D組に所属し、机は真ん中の列の後ろから二番目。
両腕は枕代わりとして機能し、常に机上をベッドとして活用中。
彼が唯一授業時間内で起きているという話を聞くのは、テストの時ぐらいだと言われている――
――が。
「…暁、お前そろそろ本当にヤバいぞ」
担任に呼び出され、夢芽の耳に真っ先に届いたのは其の一言だった。
何がですか、とぼそぼそと言葉を紡ぐと担任は眉を顰めて手にした書類をぱらぱらとめくる。
「ここんとこ、テストにまで寝てる教科が多すぎる。追試を全て普通にパスできるんなら、もっとテスト時間中起きてろ」
にまで、を多少強調しながら担任は言う。が、夢芽にとってそのニュアンスは微妙すぎるもので伝わりはしなかった。
「…はぁ」
「で、だ。次のテストで落としたらヤバい科目が3科目。3科ってわかるか?相当のモンだぞ?何科落としたら3年になれないのか知ってるのかお前は」
わかりますわかります、そう呟きながら夢芽は早々に職員室を後にした。
職員室の帰り道で。
夢芽は担任から言われた言葉を頭の中で整理していた。
次のテストで落としたらヤバい科目は3科目。
テスト時間は起きてろ。
…何のことは無い。これだけである。
「………そうか、…勉強して、寝なければ良いのか」
夢芽はそんな今更、わかりきったことをぼそりと呟いた。
一ヵ月後。
「…夢芽」
「…ん?……何、兄貴…」
「お前、…何した?」
図書室の奥で寝ていると、いきなり同校の兄美弥が起こしてきた。
「…何、って、…どーしたの、兄貴…?」
「Dの奴に聞いたんだが、お前、世界史と現代文と地学のテストだけ100点だったって言うじゃねぇか」
「…そうだけど…?」
夢芽はむくりと体を起こして目をこする。
「世界史も現代文も地学もお前がテストの時一番解答用紙に書き込むの面倒くさがって毎度俺に追試用でテスト終わった後答え写させてやってた教科じゃねぇか、一体何やったんだお前」
美弥は一息で言い切ると、最後はずいと夢芽に詰め寄った。
夢芽は少々怪訝そうに髪の毛をかき上げると、ふああと大きな欠伸を漏らす。
「………失礼だな、…流石に中間期末学年末その他全部のテストが追試じゃヤバい、って言われたから…今回はちょっと真面目に勉強して、答え書き込んだだけ」
「…は?」
「だから、…俺は何もやってないの。カンニングペーパー作ってる暇あったらノートの方写してるし、…今回はちょっと勉強に時間回したけど」
面倒くさそうに椅子の背に寄りかかりながら、ぼんやりと答え夢芽は再び欠伸を漏らした。
「………世界史、現代文、地学…全部ちゃんと点数取ったのに、何でまた呼び出されなくちゃならないんですか」
夢芽は何故か、再び職員室に呼び出されていた。
「それは確かに褒めてやろう暁。よくやった。…だがな」
「…?」
担任は手にした書類を一枚ぱらり、とめくる。
「…今回の試験中、眠っていなかった世界史、現代文、地学の代わりに今度は科学、リーディング、政経が白紙で出されたと聞いたんだが?」
暁夢芽。
2年D組に所属し、机は真ん中の列の後ろから二番目。
両腕は枕代わりとして機能し、常に机上をベッドとして活用中。
彼が授業中起きているという話を聞くのは、限られた教科数のテストの時ぐらいだと言われている――
夢芽は「やらないから出来ない子」だけど「やれば出来る子」だと言うお話。
夢芽の席は弄くり甲斐があって楽しそうな席を指定しました()
2年の学年を受け持っていらっしゃる先生方はきっと夢芽の居眠り改善は諦めているでしょうきっと(笑)
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