銀の風見鶏 第一話 ――出会い、解けない謎
…辺りはほぼ真っ暗に近かった。
真の闇とは、また違う…月明かりのせいだろう。
今日は、満月だった。
「…ちぃっ…」
グルーは片手で片腹を押さえ、毒々しい赤から目をそむけていた。
…月明かりが、岩陰を照らす。
彼…グルー・ブレイアンドは岩に寄りかかった。
彼の前に、銀色に光る――風見鶏が現れる。
その光は…いつもとは違いゆっくりと点滅している。
「…まるで俺の言うことに従わなかったからだとでも言いたそうだな…」
グルーはその場に座りながらゆっくりと顔を上げる。もう…半ばあきらめかけていた。
「こうなったのも、お前のせいだろ…ったく、面倒なことだよな…」
風見鶏は相変わらず点滅している。
この風見鶏…彼以外には見えない。
そう、これは…ブレイアンド家に伝わる――銀の風見鶏。
発する光によって持ち主の身に迫る危険を伝えてくれる。そして行くべき方向へ導いてくれる。
彼は…今日この風見鶏の示す方向とは別の方向を歩いたのだ。
そして…待ち受けていた刺客に襲われた。
勝負には勝ったが、彼は深い傷を負った。
が、さらにこの風見鶏には――もう一つの秘密があった。
秘められた…力。
代々狙われ続けている、その力。持ち主の願いを何でも叶えることのできる――力。
世界を無にも有にもできる――力。
が、その力を使うには条件があった。
…条件…
「…何で…わからねぇんだろうな…」
そう、彼はその条件を知らなかった。
風見鶏を受け継いでいた先代――つまりグルーの父親に聞いていたことは…
力を使うことができるのは、たった一回。
願いを一つ叶えたら――風見鶏は消える。
風見鶏はブレイアンド家にかけられた――呪いのようなものだった。
そして…その力を狙う連中もいる。
力の使い方はわからないにしても、その力…手に入れれば最強ともいえるその力を、奴らは狙っていた。
昔から先祖は色々調べていたが…その真相は未だに謎に包まれている。
「俺も…もう…終わりだな…」
彼はぐったりと岩に身を預ける。
辺りは暗くて…何にも見えない。
薄汚れている芝生が血の色に染まる…俺の死に場所にはもってこいだ。
「じゃあな…やっとお前とおさらばできるぜ」
…グルーはその場に倒れこんだ。
満月は、いつまでも光り輝いていた。
そして、風見鶏も――誰に見られるわけでもないのに、
いつまでも…グルーを照らし出していた。
「…」
…誰かの声が聞こえる。
「…!!」
何かを言っているようだ。
「…」
ふと…体中が軽くなっていくのを感じていた。
ついに来たか…お迎えが。
そんなことを考えつつ…グルーの意識は相変わらず途絶えられていた。
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