――その日の夜。

 外は怪しいぐらいに静まり返っていた。
――コンコン
「はーい…あの、どなたですかー…えっ?あっ…きゃぁっ!」
『何者か』はティファの手を掴み、そのままどこかへと連れ去った。

「おい、グルー!」
フィッシュ館から出たグルーの後ろから何かの声。グルーは振り向く前からわかっている。
「…またお前か」
「どこ行くんだよ。今度こそ俺も同行させてもらうぜ」
「止めておけ。お前が来たって何の役にも立たねぇよ」
軽くあしらう。
「俺を甘く見てもらっちゃあ困るぜ。これでも戦いなれてるからな」
「…あのな…」
「そうだな、今回は俺も同行させてもらおうかな」
また違う声。グルーは意外な顔をした。
「ファレイ…お前まで」
「前にもどこか1人で行ってただろ?俺はあの時何も言わなかったけど…はっきり言って気になるからね」
微笑む。いつもはかけていない眼鏡がきらりと光った。
「俺も行かせてもらうよ、グルー」
「…」
溜め息。
「後悔したって俺はしらねぇからな」
「そうこなくっちゃ」
3人は歩き出した。
「(どうするか…コイツ等)」
グルーは考えた。
 …少なくとも、風見鶏のことはそう軽々しく話すわけにはいかない。
 クレイアのように風見鶏が見えているならともかくとして…
 この2人には風見鶏が見えていない。
 そう軽々しく話して、街中にうわさが広まったら――…
 それこそ大変なことになる。

「あら」
農場へ着くと、そこにはすでにクレイアと…メリッサがいた。
「今回はあなた達も一緒?」
クレイアが問いかける。
「今回はって…ってことは、前回もクレイアが一緒だったわけだな?」
シルドは身を乗り出す。
「…それはともかくとして、大変なことになったわ。グルー君」
メリッサが言う。
 彼女には『実はグルーを追っている者がいる。そいつとの戦いに前回も農場が使われた』と言ってある。最初こそメリッサは怒り出したものの戦いの片付けは全てグルーとクレイアで行うことが条件で、どうにかおさまったのだ。
 が、その戦いに少々興味を持ったらしく見物に来ると言ってきたのであった。
 こういうところは…矛先は違うもののリリーメと似ているのかもしれない。

「…どうした、メリッサ」
「ティファニーさんが何者かに誘拐されたのよ。…さっきこの子達が知らせに来たわ」
メリッサの後ろから3人の子供が現れた。
「お姉ちゃんを助けて!」
「お姉ちゃん、誰かに引っ張られて行っちゃったんだ!」
「お兄ちゃんたち、お願い!」
2人の男の子と1人の女の子が次々と声を上げる。
「また、大事になってきたな」
シルドが呟く。
「…ああ。で、そいつの手がかりはあるのかい?メリッサ」
ファレイが訊ねた。
「それが…」
メリッサは暗い顔をする。がしかし
「手がかりはないけど、当てならあるわ」
クレイアがそう言った。
「どういうことだい?クレイア」
「大体のめぼしはつくわ。でもその人が犯人だとすると、探すのは結構困難よ。まあ私の力を使えば…見つかるかもしれないけれど」
クレイアはにやりと笑う。
 ここは大人しく頼んでおくのが得策だと誰もが悟った。
「…クレイア、頼む」
「わかったわ」
グルーはクレイアに頼むことにした。
 しばしクレイアは目を瞑る…そして数秒後、目を開き

「…やっぱり『彼』のせいね」
「マジかよ…」
グルーは溜め息をつく。

「『彼』って誰だ?」
「じきにわかるさ」
一言であしらった。
「で、ティファは結局どこにいるんだ?」
「森の奥ね…それより先は、私にもわからないけれど。道を辿れば着くと思うわ…ティファニーさんのオーラがそこの道から伝わってくるから」
そして一同の向かう先は決まった。

「…満月、か…」
ファレイが呟く。
「…ファレイ君?」
メリッサが声をかける。ファレイは満月をじっと見ている。
「…あ、何だい。メリッサ」
「さっきから、何だか様子がおかしかったから声をかけてみただけだけど…」
「何でもないよ、何でも」
ファレイは何食わぬ顔で見送った。

「…!!」
クレイアが何かの気配を察知した。
「どうした?」
シルドが言う。
「…来たか?」
グルーも問いかけた。

「…来たわ…」
「みんな、伏せろ!」
グルーが声を張り上げる。

――ダダダダダダダダ

「うわ…っ」
間一髪、シルドは地面に伏せ銃弾を防いだ。
「みんな、大丈夫か?」
「ああ、こっちはな」
ファレイの問いかけにも応じた。
「グルー、クレイア!」
「…大丈夫よ」
「グルー!」
「彼ならあそこよ」
クレイアは指差す。
 グルーはとっくに何者かの『影』と戦闘を開始していた。
「グルー!助太刀するぜっ」
「いらねぇよ!それより避難しとけ!こいつ銃火器を持ってやがるんだからな…」
シルドの申し出は却下された。
「しょうがないな…メリッサ、お前はこっちに来てたほうがいいみたいだ」
「でも…」
「シルドもだ!今、あまり戦力の無い奴が出て行っても仕方ないだろう…」
「ファレイ…!」
「グルーに負けたお前が、まともにグルーを追ってる奴の相手が出来るとでも思ってるのか?」
「ぐっ…」
鋭い突っ込みである。
「甘く見ないでちょうだい…これでも基礎演習と応用演習はちゃんとやってあるんだから」
メリッサはそうファレイに返す。ファレイは苦笑すると

「…戦うのは、自分の身が危なくなった時だけ、な…今は下手に手を出さない方が良いだろ」
「…そうね…わかったわ」
メリッサは渋々それを了承した。

 グルーは相手めがけて、攻撃を開始していた。









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