「出たな…!」
「お前、もう来たのか。つまんねぇ」
「そういう問題じゃねぇ…ティファは何処だ?」
「さぁな」
「何処って聞いてるんだ俺は…!!」
グルーは奴目がけてナイフを投げる。無論、当たるとは思っていない。
 目の前の奴は案の定するりと交わす。

「おっと…そんな物騒なもん振り回すなよな」
「銃火器使ってるお前には言われたくねぇな」
「お前とかてめぇとか…名前を呼べよ、グルー!」
口元がにやりと笑っている。
「俺の名は…コールド。次会う時はそう呼べ」
「…んなこと知るか。ティファはどこだ」
グルーは奴…コールドをにらみつけた。

「そんなに彼女が大事かい。ふーん…それじゃ、この森の中から探し出してみな。もっとも、お前みたいな奴が彼女を捜し当てられるとは到底思えないがな」
「何だと…!?」
「じゃあ、頑張って探しな。探し当てられたら褒めてやるぜ」
その瞬間、コールドは消えた。

「…悪いなファレイ、みんなをこっちにまとめといてくれて」
「まあね…相手が銃火器使ってちゃ、あんまり戦闘能力無い奴が出てっても迷惑だろ?」
「その通りだ」
するとメリッサが溜め息を吐く。
「さて、この状況…どうするの?ティファニーさんはこの森にいるらしいけど…」
「…でも、おかしいわね…」
「何がだい、クレイア」
ファレイが問うとクレイアはこう答えた。
「この森からはティファニーさんのオーラが全く感じられない…さっきまで感じていたものが。どこへ消えたのかしら…」
「…そうだな、俺も協力しようか。グルー」
ファレイは言った。が、グルーは
「これは俺が何とかする…お前らは帰れ」
「何言ってんだよグルー!ティファがいなくなって俺も放っておけねぇよ」
「そうよ。人数は無いよりあった方がいいでしょう?」
「あなただけの問題ではないの。あなたが制限する権限は無いわ」
シルドとメリッサとクレイアが反論する。
 が、グルーは
「馬鹿かてめぇら、元々あいつが現れたのも俺の所為だ。自分の責任は自分で取る」
…と言ったきり歩き出してしまった。
「…あーあ、行っちゃった」
「まったく…話にならないわね」
「まあまあ、今回のことには…グルーなりに責任を感じてるんだよ」
ファレイがみんなをなだめる。
「…でも、このままじゃいけないわね…」
クレイアはつぶやいた。

「…ったく、一体どこにいるんだ…」
グルーは溜め息を吐く。
『誰か…』
「…!?」
『誰かいませんかっ?』
「ティファか!?」
グルーは声を追っていった。
『…グルーさん?』
「…っと、こっちか…」
「あっ、グルーさんっ!」
すると妙に聞き慣れた声。
「…ティファ!?」
「よかったぁ…気づいたら誰もいなくって…」
グルーは感じ取った。
 ティファの周りにはバリアが張ってあり、気配を感じ取れなくなっていた。
 だったら、何で自分がティファの声を聞くことができたのか…
 わずかな疑問だった。
 そして、コールド…奴は魔法を使えたのだろうか。
 空を飛ぶことは出来るにしても…こうった魔法は別問題である。


「ちょっと、寂しくって…でも、グルーさんが来たから…もう安心ですね」
「…ティファ」
「あとちょっとだけ…怖かったので」
苦笑いする。が、それだけのものではなかったことを…グルーは承知していた。
「…悪かったな…俺の追っ手のせいで」
「そんな、グルーさんは悪くないです!」
グルーはまた口元を少し上げるだけの微笑を見せると、ティファの頭を軽く撫でてやった。


「グルー!それに…ティファっ」
シルドと子供達は2人に駆け寄った。
「おねぇちゃーんっ」
「ごめんね、お姉ちゃん心配かけちゃって。もうどこにも行かないからね…あのお兄ちゃんが助けてくれたから、もう大丈夫」
ティファは子供達を慰める。
「ティファニーさん、大丈夫!?怪我は無い?」
「あ、メリッサさん。大丈夫ですよー」
「…一件落着、かな」
ファレイは苦笑しつつそうつぶやいていた。


「…どうやら、風見鶏の所為…みたいね」
「何のことだ」
「だってそうでしょう?私でも感じ取れなかった気配を、あなたは感じてみせたんだから…風見鶏意外特別な力を感じない、あなたがティファさんを探し当てて見せたのだから」
「…知るか」
「ふふっ…ますます興味が出てきたわ、その風見鶏」
クレイアは不吉な笑みを浮かべた。

「…彼、次はいつ来るかしらね…」


 …これは、後の話だが。
 グルーは女子生徒に追いかけられることはなくなったが
 その代わりにティファの家の子供達に追いかけまわされる羽目になったのだそうだ。
 そして、何故かグルーについたあだ名が

「王子のお兄ちゃんっ」

 …だった。
 一体どういういきさつでこう呼ばれるようになったのか…
 それは、子供達と…もう1人しか知らない。

「王子のお兄ちゃーんっ、遊んでよぉっ」
「何なんだ一体…それにその呼び方は何だ…」
「だってお姉ちゃんが言ってたよ。お兄ちゃんは、助けに来てくれた御伽話の王子様みたいだったってvv」
「だから、遊ぼうよぉー。王子のお兄ちゃーん」
「だぁらっ、その呼び方は止めろって」
「王子のお兄ちゃーんっ♪」
「…(溜め息)」



 …どうやらグルーの苦悩は、まだまだ続くようである。



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