銀の風見鶏 第三話 垣間見せた過去・確実に変わっていく何か


 ふと、空を見上げてみる。
 相変わらず、厳しい日差し。
 8月、そう…今は夏。

「グルーさん、どうですかーお味は」
「…いいんじゃねぇか」
ティファの問いにグルーが答える。
 ティファの顔に暖かい笑みが広がった。
「良かったぁ…」
そうこっそりつぶやく。
 一方のグルーはサンドイッチを口にくわえている。
「メリッサ、それ貰っていいかい?」
「あ…ええ、いいわよ」
ファレイはメリッサのバスケットからパンを取り出す。
「ありがとう」
ファレイの口元にも小さく笑みが現れた。
「でも…楽しいですねっ、こうやってみんなでピクニックみたいにするのって♪」
「ピクニック…か…」
グルーが口を濁す。
 …ここは農場。メリッサの管理している農場である。
 そこに何故グルーとファレイがいるのか。
 答えは簡単。クレイアに用があったため農場を通過しようとしたところ2人が昼食を取るところだったという。
 で、ティファが誘った…と。
 いかにも目に浮かんできそうな光景である。
「ごちそうさま…と」
グルーはつぶやく。
「俺たちまでいただいちゃって悪かったな」
「いいんですよぉ。人数は多いほうが楽しいですしv」
ティファが屈託のない笑みを見せる。

 ファレイに向けられたものとはいえグルーの胸の鼓動が一瞬高まった。
 ファレイはそれを察するがシルドのようにあえて口に出すようなことはしない。

(…最近、何かおかしい…)
グルーはそう思った。

「…それじゃ、俺達は行く」
「じゃあな、2人とも」
グルーは歩きかけたが一度振り向いて
「…2人とも、サンキュ」
と言った。
 が、すぐにすたすたと歩き出してしまう。
「あ、どっ…どういたしましてっ」
ティファは真っ赤になって返答する。
 …そしてファレイとメリッサ、考えている事は一緒だった。


(…似た者同士…)


 すたすたと歩くグルーの後姿を見て、ファレイは少し笑みが漏れる。
「何だ、ファレイ」
「いや、グルーってさ…」
言いかけたが止まった。
「…別に、何でもないよ」
「…何だ」
「だから、何でもない」
ファレイはそれを言おうとしたが言ったが最後、当分口を聞いてもらえないのがオチだろうからだ。
(…ったく、グルーにもこんな可愛い面があったなんてな…シルドじゃないけど、これは誰が見ても面白いよな)


 そして、所変わってグルーの部屋。何故かシルドまでいたりする。

「ったく、羨ましすぎるぜてめーらっ!!」
「お前も誘ったのに来なかっただろうが。クレイアに用があったって言ったのに…そういえば妙だったな…」
グルーは考え込む。
「そういえばそうだね…シルドが女の子の名前出して黙ってるなんて…」
ファレイも首をかしげた。
「…バイト、今日サボるとクビだったんだよ…」
シルドは泣きそうな声でそう嘆く。
「あーっ、ちきしょーっ。ティファとメリッサの弁当…てめーらぁ…」
「まあまあシルド、そういえば今日は夏の大武道会の申し込みの日じゃなかったか?」
ファレイにそう言われ、シルドの顔はさーっと青くなる。
「やっべーっ、あれまだ出してなかった!!じゃあなっ、2人とも!!」
どどどどど…
 シルドはあわただしく出て行った。

「…大武道会?」
「ああ、そういえばグルーは知らないんだっけ。もうすぐブルースカイ恒例の夏の大武道会があるんだよ。シルドは常連だからな」
「ファレイは出ないのか?」
「俺?俺は出ないよ。あんなに荒々しいのは好きじゃないからね」
確かに、ファレイがそういったものを好むとは思えない。
 グルーはふと呟く。
「あんなのが出て、勝てるんだか…」
「さぁ、どうかな。案外やるんだ、シルドの奴」
「…そうなのか?」
「まあ、楽しみは後にとっておくもんだよ」
ファレイはそう言うとわずかに微笑んだのだった。


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