「…始まったようね」
「クレイアさん…グルーさんは…」
「彼は…大丈夫、と言いたいところだけど…コールドの魔力が私より上だとしたら、かなり不利になるわね…」
「…っ!!」
ティファとクレイアは、心配そうに窓から2人の決戦を眺めていた。小さな弟達は、やはり感じ取っている様子で怯えている。
「大丈夫よ、此処はさっきより厚い結界を張っておいたから…」
クレイアは子供の一人をそっと撫でる。
「…」
ティファは、釘付けになったように…窓の外を眺めていた。
ダダダダダ――肩に担いだマシンガンの銃声と、その合間に切りつける長刀の音が交互に響く。
戦闘は、主にマシンガンの弾を交わしながら――弾を補充する隙を狙って切りつけていく形になった。
が、そうそう隙がある訳でもなく…それも、相手は浮いているのもあって大分グルーの不利な状況にあった。
グルーの体力だけが、少しずつ…削られていく。
「…ぐっ…」
「ハハハハハ!グルー、もうお仕舞いか!?お前の力はそんなモンなのか!?」
ダダダダダ、容赦なくマシンガンを打ち続ける。
マシンガンを交わしながら、グルーは気付いたことがひとつだけあった。
コールドの使っているマシンガンは、マシンガンの形をしていれど続に言われている「マシンガン」ではなく――「魔法銃」であること。
その為、地には焼け焦げた跡が残っている。小さく煙も上がっていた。
魔力の尽きがあるのだとしたら、それを隙に攻撃が出来るものなのだが――コールドの場合、その「尽き」があるのかどうかすら、不明なのである。
グルーには風見鶏以外の魔力は一切無い、その為その辺は図りかねていた。
(…何とか、隙を見つけることは出来ねぇのか…!?)
何とかして、視界を凝らす。
ふと、風でコールドの前髪が僅かに持ち上がったのが見えた。
(――!?)
右目が、閉じられていた。
マシンガンを撃つのには、標準を決めるのに片目しか必要無いが――
そこが死角なのには変わり無い。弾を補充している間に、そこを狙うことが出来たら――
「…今だ!!」
グルーは、力一杯跳躍した。
コールドの真後ろに回りこみ、長刀を其処から振り下ろす――が
「…チッ…」
コールドは寸前で交わし、マシンガンで長刀を払いのけた。
グルーは体制を立て直して着陸する。コールドは再び笑い出した。
「ハーッハッハッハッハッハ!コレでやっつけるつもりだったか!?」
「…いや、そのつもりはねぇよ」
「じゃあ――…!?」
ふと、僅かだが――グルーの口元から笑みが零れた。
魔法銃は、真っ二つになり…コールドの肩から、ごとん、と…滑り落ちた。
「なっ…」
「お前は払いのけた気でいたようだが…甘かったな、コイツは見た目こそショボいが…刃先だけは、付け替えてあったんだよ」
と、長刀を再び構える。
「さぁ、どうする?」
「…」
コールドは暫く地面で項垂れていた――が、クスクス…と、笑みを零すと…
「…!?」
とん、と軽く地面を蹴って浮き上がり――軽く呪文を詠唱した。
グルーも忘れていた、コールドは…魔術師である。
それも、一瞬でも小屋を吹き飛ばそうとした程の魔力の持ち主の。
すなわち、魔法銃という媒体を挟まなくとも――クレイアのように、魔法を使うことが出来るということを。
「――っ!?」
「死ね、グルー!!!!!」
その手から、強大な光が放たれた。
僅か一瞬で、その光はグルーを包み込む――筈だった、その瞬間。
体力的に交わすことが出来ずその場に立っていたグルーのすぐ目の前に――少女が、飛び出した。
「なっ…」
「邪魔だ、どけ!!」
「嫌です、どきません!!」
少女の手からも、光の筋が放たれている。
目の前の少女は、知らない姿をしていれど――よく知っている少女であった。
「ティファ…っ!?」
「く…っ!!」
光の筋は、真ん中で押し合いへし合い…行ったりきたりしている。
が、少しずつだが…ティファの方が追い上げていた。
「っ…!!いい加減諦めろ…っ!!」
「嫌ですっ!!絶対に!!!!!」
ティファは、そう叫ぶと…一気に、コールドの方へと、魔法を押し出した。
――ズゥゥゥゥン
地響きと同時に音が鳴ると、周囲は砂埃に包まれた。
が、一人の少女が…目の前にいたのは…砂埃の中でも、わかった。
「…ティファ…?」
「………へへ、見られちゃいました」
暫くそのまま立っていたが、苦笑してそう零す。
スカートもエプロンもところどころが裂け、真っ赤な帽子もどこかへと飛んでいってしまっていた。
そして、その髪の毛と瞳の色は…いつものような金色ではなく、透き通るような緑色をしていた。
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