――ある日の朝。

「…今日はファレイが飯当番だったな」
「ああ、行こうぜ」
グルーとシルドは、ファレイの家の扉をノックする。
「おはよう、今日は2人とも遅かったね。もうカレイド来てるよ」
「カレイドは学生だから早いのが当然だ」
「そうそう、その通り」
グルー、シルドと続く。
「…おはようございます、2人とも」
カレイドは愛想良く挨拶をする。
「…ところでグルー、新しいバイト始めたんだってな」
皿に盛り付けながら、ファレイが問いかける。
「ああ…何故知ってる」
「俺も知ってる。リリーメが街中で言いふらしてたぞ」
と、楽しそうに笑いながらシルドが続ける。
「グルーさんが雑貨屋より新しいバイト優先するから、最近全然時間被らないーって、リリーメがごちてたぞ」
「で、…何なんだ、その新しいバイトってのは」
ファレイが全員分の皿をテーブルに並べると、問いかけた。
「…別に、関係無いんだから言わなくても良いだろ」
「それは違うな、…当ててみようか?」
「何だ何だ?」
シルドが身を乗り出す。
「…ボディガードとか?」
と、さらりとファレイが言う。あながち間違った表現ではない。グルーは茶を吹きそうになっていた。

「…何だグルー、ボディガードぐらいもったいぶる事じゃねぇだろうが」
「………」
「間違ってなかったみたいだね」
「…いいから、早く飯食え!」
グルーは怒った調子でそう言うと、朝食を一気に口に流し込んだ。

「…ご馳走様」
「じゃ、新しいバイトともども頑張れよ」
と、ファレイが手を振る。訝しげにファレイの方を一度見ると
「…ああ」
とだけ、返しておいた。

 天気は快晴。
 グルーは、外に向かって一歩踏み出していった――







-銀の風見鶏*編 fin-

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